人工知能(AI)技術の発展により、企業のカスタマーサポート業務の一部を「チャットボット」が担えるようになりました。
「人的コスト削減」や「ECサイト売上向上」などの利益が見込めることから、チャットボット導入・運用に力を注いでいる企業が多くあり、成功事例も既に確認することができます。
「楽しく会話をするイメージのチャットボットがビジネスシーンで使えるの?」と驚いた方もいるかもしれません。
今回の記事では、チャットボットの進化によって可能となったビジネスシーンにおけるチャットボット運用について、既存サービスと導入事例を参考に紹介していきます。
目次
チャットボットとは?
チャットボットとは「対話をするロボット」のことです。人工知能技術と自然言語処理を活用し、LINEなどのトーク機能を使いながら自動でユーザーと会話をしてくれます。
ビジネスシーンにおけるチャットボット運用では、ユーザーからの質問に自動で返信をしたり、新商品やサービスの提案をしたりするのが特徴です。
また、チャットボットは「API(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)」を利用して開発されることが多く、「プログラムを一から作る必要がない」という点で導入ハードルが低いといえます。
APIとは「窓口」のことであり、ソフトウェア同士をつなげるものと覚えておきましょう。
つまり、チャットボットを一から作らなくても、APIを公開しているサービスを利用すれば、チャットボット運用が可能になるということなのです。
企業や店舗はもちろんのこと、個人もLINEのAPIを利用してチャットボットが作れることから、初心者にも十分活用が可能なツールといえます。
チャットボット導入のメリット
企業がチャットボットを導入するメリットは「業務効率化」にあるといえます。
日頃の業務の中で起きる「お客様対応」の一部をチャットボットが対応することで、「人的コストの削減」または「別業務への応援」という形で業務を効率化することが可能です。
チャットボットの導入は、特に忙しい店舗(現場)への効果が大きく、業務終了後に「事務処理」や「お客様へのメール対応」を行う必要がなくなるためスタッフの労力削減につながります。
チャットボットの導入により、スタッフは時間内に仕事を終えるため残業をすることもありません。
また、チャットボットに企業や店舗における既存のFAQを落とし込むことが可能です。
Webサイトなどに掲載しているFAQ(よくある質問とその回答)と同じ内容の問い合わせが来ることで、スタッフへの負担が大きくなっている店舗も多いのではないでしょうか。
もしチャットボットがFAQを回答するようになれば、ユーザーの悩みや疑問はより早く解消されるようになります。
チャットボットを導入することは、これまでコンバージョンに至らなかったユーザーへのアプローチにもつながっていくと覚えておきましょう。
チャットボット導入事例
ドラッグストアや調剤薬局を展開するある国内大手企業がチャットボットを利用したQ&Aシステムを導入し、全国1300店舗のQ&A対応を行った事例があります。
その背景には「取扱商品が多岐にわたること」や「店舗オペレーションの多様化」などがあり、ユーザーのQ&Aに迅速に対応する目的から導入が決まったということです。
また、韓国発のある化粧品メーカーはファン拡大にともなう「問い合わせの増加」が課題となり、「回答スピード」が求められる若年層をターゲットに絞ったチャットボットを採用しています。
その結果、繁忙期の問い合わせが導入前に比べて50%減り、チャットボット利用者のコンバージョン率がオンラインサイト全体のコンバージョン率を大きく上回ったというデータが出ました。
ドラッグストアやスーパーマーケットでは新商品の把握はもちろんのこと、業務マニュアルの徹底、お客様対応など日々多くの業務に追われてしまいます。
提供するサービスのクオリティを維持するためには作業効率を上げるか、従業員を増やすなどの対策が一般的でしょう。
しかし、どちらも既存スタッフへの負担を大きくすることにつながるため、判断が難しいのが現場の本音です。
「既存スタッフの労力削減」と「売上向上」の2つを同時に実現するためにも、チャットボットの導入を本社のマーケティング担当者や店舗の販促担当者は検討する必要があるでしょう。
コミュニケーションを楽しむチャットボット
ビジネスシーンにおけるチャットボットの導入について説明してきましたが、早速チャットボットの導入を検討するマーケティング担当者は少ないかもしれません。
これまでチャットボットを利用したことがないのであれば、尚更チャットボットの運用イメージが湧かないはずです。
そこで、ここからは企業が提供しているチャットボットを紹介しながら、実際にどのようなコミュニケーションが取れるのかを説明していきます。
マイクロソフト「りんな」
マイクロソフトが提供している「りんな」は、リアルな女子高生感が反映されたチャットボットとして知られています。
2015年8月にLINEに登場して以来、若い世代の間でファンを増やしながら2019年3月には登録ユーザー数763万人を記録しました。
驚くのは「りんな」の活動範囲で、テレビやラジオ、歌手活動など多岐にわたっています。
また、プラットフォームの1つであるLINEでは友だち追加を行うことができ、実際に「りんな」と会話をすることができます。
メッセージを送ると分かりますが、レスポンス速度がとても速く、精度の高いコメントが返ってくるのが特徴です。
そのほかにも「時事ネタ」に対応したコメントを返してくれるなど、リアルな存在を感じさせてくれるチャットボットとなっています。
アスクル「LOHACOマナミさん」
アスクルが運営する個人向け通販サイト「LOHACO」のLINE公式アカウントでは、「LOHACOマナミさん」がチャットボットとして質問や問い合わせに対応してくれます。
友だち追加を行い、「こんばんは」などと挨拶をすると、「こんばんは。LOHACOにお越しいただきありがとうございます」とスムーズなメッセージを返してくれることに驚くでしょう。
また、会話を続ける中で「どこに住んでいるの?」と聞いてみると「東京都豊洲に住んでいます」と返事をしてくれるため、実際の人間とコミュニケーションを取っているような気分になります。
こうしたコミュニケーションがLINEで行える上に、LOHACOでの「注文方法」や「配送料」、「領収書について」などもトーク画面のメニューから選択できるため、手軽にLOHACOの情報を得ることができます。
オンラインサイトならではの「セール情報」も随時更新されており、LINEを利用していながらLOHACOでお得に買い物を楽しむことができるのも特徴の1つといえるでしょう。
チャットボットには無限の可能性がある
ビジネスシーンにおけるチャットボットは「カスタマーサポート業務の対応」といった形で導入されることが多いといえます。
しかし後述したマイクロソフトが提供する「りんな」などのコミュニケーションAIに見るように、チャットボットが担える領域は単なるテキスト上のコミュニケーションに留まりません。
まずは自社のカスタマーサポート業務をチャットボットの導入により効率化することで、浮いた労力を他の業務に充てられないか検討してみるのが良いでしょう。
その後でチャットボットが担える領域の可能性について、サービスを提供する企業と連携しながら開発を進めていくのが求められるのではないでしょうか。
(画像はPixabayより)